Q.46 壁面変位の防止法

(更新日:2009年9月15日)

 壁面変位が発生しないようにするための対策法について教えてください。

A.46

壁面変位は補強土壁特有の問題で発生頻度は非常に高い。壁面変位が発生すると,外観上の見映えが悪くなり,また見る者に不安感を与えるなどの問題が発生する。しかしながら施工中に発生した壁面変位から転倒や崩壊などの大事故に至った事例は報告されていない。壁面変位で問題となる形態は,図1に示すように壁面材により次の2つに分類できる。各々について変位状況,原因と対策について述べる。

図1 壁面変位の形態

 

(1) コンクリート製壁面材における水平変位

a) 変位状況

垂直なコンクリート製壁面材(コンクリートパネルやコンクリートブロック)を用いた場合,施工中に壁面材が前面に変位することが多い。変位量が微小であれば問題にならないが,変位量が大きくなると問題となり,なかには施工のやり直しをする現場もある。

b) 原因

施工中に発生する壁面材変位は補強土壁特有の現象である。これは補強土壁では補強効果を発揮するために,ある程度の変位(変形)を要するからである。図2に帯鋼補強材の土中引抜き試験結果の模式図を示す。図より補強材に所定の引抜き抵抗力が発生するためには,ある程度の変位が必要であることがわかる。

図2 帯鋼補強材引抜き試験結果の模式図

問題はこの変位量が何に影響されるかということである。現段階では残念ながら変位量を定量的に推定することはできないが,定性的には次のことがわかっている。

 

  1. 盛土材の土性
     施工中に発生する補強土壁の水平変位量は使用する盛土材の土性に大きな影響を受けることが経験的にわかっている。一般には細粒分が少なくせん断強度の高い盛土材(礫,砂)を使用すると壁面水平変位は微小であるが,細粒分が多くせん断強度が低い盛土材(粘性土に近い盛土材)を使用すると,壁面水平変位が大きくなる場合が多い。
     図3はジオテキスタイル補強材の土中引抜き試験における変位量と引抜き力との関係を盛土材別に示している。図からは同じ引抜き抵抗力が発生するためには,砂よりも粘土の方が多くの変位量が必要であることがわかる。また,補強材の種類によっても壁面変位量は異なると考えられるが明確になっていない。壁面変位量を定量的に推定するためには,補強材ごとに盛土材と壁面変位量の関係を調査する必要がある。

図3 ジオテキスタイル補強材の引抜き試験結果

 

  1. 施工法
     壁面水平変位量は施工法にも影響を受ける。壁面近くを大きな重機で盛土材のまき出し・転圧作業を行うと,壁面材が大きく変位する場合がある。また,壁面材と補強材との連結部や補強材(特にジオテキスタイル補強材)を緩んだ状態のまま盛土材のまき出し・転圧作業を行うと壁面が変位する。

 

c) 対策

壁面水平変位を少なくするための対策を以下に示す。

  1. 良質な盛土材を使用する。
     良質な盛土材とは,「細粒分含有量が少なく,せん断強度が大きい砂質土,礫質土」,「スレーキングしない岩石質材料」,「細粒分含有量が少ないまさ土・山砂・シラス(だだし水の浸入がないような対策を施すことが条件)」などをいう。
  2. 適切な施工を行う
     補強土壁に定められた施工法を厳守するとともに,連結部や補強材に緩みが発生しないように,地山方向にできるだけ緊張させてから,盛土材のまき出し・転圧作業を行う。

 

(2) 鋼製枠壁面材における鉛直変位

a) 変位状況

鋼製枠壁面材を用いる場合,通常は壁面緑化を目的とするため,壁面は1:0.2~0.5程度の勾配で傾斜している。鋼製枠壁面材では垂直なコンクリート壁面材のように,水平変位による問題はあまり発生しないが,鉛直方向に発生する圧縮変形や座屈が問題となる場合がある。

b) 原因

鋼製枠壁面材に発生する鉛直方向の圧縮変形に影響を与えるものを以下に示す。

  1. 盛土材の土性
     壁面材の圧縮変形は盛土材の土性に大きな影響を受ける。盛土材の圧縮沈下が大きいと,鋼製枠の剛性が小さいため同じように圧縮変形が発生する。圧縮沈下が少ない盛土材を使用すると,壁面材の圧縮変形も少なくなる。
  2. 鋼製枠の剛性
     鋼製枠は一般的には格子状鉄筋やエキスパンドメタル等で製作されているが,壁面剛性は各々で異なっている。盛土材が同じであれば,壁面剛性が小さいほど変形は発生しやすい傾向にある。
  3. 基礎地盤の剛性
     鋼製枠が設置される基礎地盤の剛性も壁面材の圧縮変形に影響を与える。すなわち,岩盤やコンクリート構造物の上に築造する場合,基礎部は全く沈下しないため,通常の地盤上に築造する場合に比較して,大きな地盤反力が発生することになる。その結果,壁面材と盛土材に大きな圧縮力が作用し圧縮変形する場合が多い。
  4. 鋼製枠壁面材の構造
     鋼製枠壁面材には,上下の壁面材連結部を固定するものと,圧縮変形に追随できるように下方にスライドできるような構造となっているものがある。前者の場合は盛土材の圧縮沈下により連結部に大きな荷重が作用し,壁面材の圧縮沈下が発生しやすくなる。一方,後者は盛土材の圧縮沈下とともに,壁面材が下方にスライドするため壁面材の圧縮変形は発生しにくい。

c) 対策

壁面材の圧縮変形を少なくする対策としては,コンクリート壁面材の水平変位対策と同じである。すなわち,良質な盛土材を使用することと,正しい施工を行うことである。

 

 

 

 

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