(更新日:2016年4月5日)
補強土壁に使用する盛土材の土質定数はどのようにして決定するのですか?
A.52
補強土壁工法の設計を行う場合,盛土材の土質定数である内部摩擦角φ,単位体積重量γが最低限必要となる。また,全体安定検討ではこの他に粘着力cを考慮できるため必要となる場合がある。
ここでは盛土材の土質定数を決定することの重要性,方法,留意点について述べる。
(1) 盛土材の土質定数を決定することの重要性
補強土壁工法の主要部材は,工場等で作られる壁面材や補強材を除けば,自然にある土や岩からなる盛土材である。これらの盛土材は複雑多岐で,地域や場所,自然条件,時間の経過等によりその性質が異なることが多い。
一方,補強土壁工法は,盛土材を補強することにより構築する土構造物であるため,使用する盛土材は鉄筋コンクリート構造物におけるコンクリートに相当するほど重要なものである。さらに補強土壁工法は,通常の擁壁等の土構造物に比べて規模が大きい場合が少なくなく,盛土材の土性によって補強土壁構造物の安定性に大きな影響を与えるため,盛土材の土質定数を決定することの重要性は,一般的な土構造物よりも高いと認識する必要がある。
(2) 盛土材の土質定数を決定する方法
盛土材の土質定数は,三軸圧縮試験等の力学試験を含む土質試験により決定することを 標準としている。しかしながら,三軸圧縮試験を実施しない場合(もしくは実施できない場合)には,粒度試験等の物理試験結果より求めた日本統一土質分類名により設計土質定数を決定している。具体的には以下に示す各工法の設計基準書などに記載されている設計土質定数を使用する場合が多い。
a) 道路土工―擁壁工指針(2012.7.)
高さ8m以下の擁壁で土質試験を行うのが困難な場合は,経験的に推定した表-1の値を用いてもよい。
表-1 裏込め土のせん断強度定数
|
b) 道路土工―盛土工指針(2010.4.)
高さ20m程度以下の盛土において,土質試験を行うことが困難な場合は,経験的に推定した表-2の値を用いてもよい。
表-2 盛土設計時に用いる土質定数の仮定値
種類 | 状態 | 単位体積 重 量 (kN/m3) |
せん断 抵抗角(度) |
粘着力 (kN/m2) |
地盤工学会 基準 |
|
礫および 礫まじり砂 |
締固めたもの | 20 | 40 | 0 | {G} | |
砂 | 締固めたもの | 粒径幅の 広いもの |
20 | 35 | 0 | {S} |
分級され たもの |
19 | 30 | 0 | |||
砂質土 | 締固めたもの | 19 | 25 | 30以下 | {SF} | |
粘性土 | 締固めたもの | 18 | 15 | 50以下 | {M},{C} | |
関東ローム | 締固めたもの | 14 | 20 | 10以下 | {V} |
本表の使用に当っては,次の点に注意するものとする。
● {G}:礫 細粒分<15%,砂分<15%
● {S}:砂 細粒分<15%,礫分<15%
● {SF}:細粒分まじり砂 15%≦細粒分<50%
● {M},{C}:細粒分≧50%
d) 鉄道構造物等設計標準・同解説 土留め構造物(2012.1.)
表-4 土圧算定に用いる背面盛土の諸数値の設計用値
土質区分 | 地盤工学会による工学的分類 | γ(kN/m3) | φ(度) |
土質1 | {G},{GS},硬岩ずり(剥離性弱) | 20 | 40 |
土質2 | {S},{SG},硬岩ずり(剥離性強) 軟岩ずり,脆弱岩ずり |
19 | 35 |
土質3 | {GF},{SF} | 18 | 30 |
補強土壁工法とは,壁面材,補強材,及び盛土材を主要部材とした擁壁の1つです。
一口に補強土壁工法といいましても,数多くの種類(30工法程度)があり,各々の工法が持つ特性も異なっています。
さらに設計法についても統一したものがなく,各工法により異なった手法を採用しているのが現状です。
このような状況において,現地に適した補強土壁工法を選定するためには,各工法の特性と現場における各種条件を整理して,十分検討する必要があります。(参考:工法選定の問題点と正しい選定法)
弊社では,各工法で同一の条件を用いた設計計算を基に,経済性だけでなく,安定性や耐久性についても充分に配慮した選定を行なっております。
公正公平な比較検討を行なうことにより,コンプライアンスに対応した成果品をお届けいたします。
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