擁壁の基礎形式の選定

(更新日:2022年8月3日)

(1) 擁壁の基礎形式の選定

擁壁の基礎形式の選定における留意点を述べる。

 

1) 擁壁の滑動,転倒,沈下等の変状の多くは基礎地盤に起因している。したがって,擁壁の基礎形式の選定に当たっては,地形及び地盤条件,擁壁の構造形式,環境条件,施工条件等について,十分な検討を行う必要がある。

 

2) 擁壁の基礎形式を大別すると,直接基礎と杭基礎に分類される。擁壁の基礎形式としては,基礎地盤や背面盛土と一体となって挙動することから直接基礎が望ましく,表層の地盤が軟弱でも比較的浅い部分(2~3m程度)に支持層が存在する場合は,軟弱層の置換えや改良を行い,直接基礎とすることが多い。

 

3) 杭基礎は,地表近くに支持層がない場合に適用される。杭基礎には,既成杭(RC杭・PHC杭・鋼管杭等)を用いた打込み杭工法,中堀り杭工法,プレボーリング杭工法あるいは鋼管ソイルセメント杭工法や現場で構築する場所打ち杭工法がある。これらの工法の選定に当たっては,経済性,施工時の騒音・振動,泥水の発生や掘削土の処理等について十分検討し,施工現場に適するとともに,杭基礎としての要求性能を満足したものを用いなければならない。また,杭基礎は,その支持機構において杭先端の支持力を考慮するかどうかにより支持杭と摩擦杭に大別され,擁壁の規模,施工性,経済性等を総合的に検討したうえで,支持杭と摩擦杭を適切に選定しなければならない。

 

4) 軟弱地盤上に杭基礎を設ける場合,背面盛土の偏載荷重の影響により,施工時または施工後に擁壁前面に大きな変位や傾斜が生じる場合があるので,地盤改良や軽量材を用いた裏込めとの併用等,総合的に検討し選定する必要がある。また,河川の水際等に擁壁を設置する場合は,洪水時に基礎が洗掘されることがある。このため,根入れ,根固め工等については河川関係の技術基準類を参照して設計するものとする。

 

5) 基礎形式の選定も,擁壁の構造形式と同様,道路計画の予備設計等の計画初期段階に行われることが多く,その後に基礎形式の変更を行うと大きな手戻りが生じることとなる。したがって,基礎形式の選定に当たっては,検討すべき内容の整理,目的に見合う調査を行うとともに,施工に対する適切な認識をもって,十分な検討を行う必要がある。基礎形式の選定に当たっては,表-1を参考にするとよい。

 

表-1 擁壁の基礎形式の選定の目安

 

 

参考文献

・社団法人日本道路協会:擁壁工指針(平成24年度版),pp28-31,2012.7

 

 

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