盛土材の改良

(更新日:2015年7月10日)

補強土壁では,使用する盛土材の適用範囲をマニュアルに規定している。現場において,適用範囲を満足する盛土材を調達できない場合,所定の強度を満足するよう,盛土材にセメント系固化材などを添加し安定処理を施す方法がある。これを盛土材の改良と呼ぶ。

ここで,道路土工 擁壁工指針(平成24年度版)においては,盛土材の改良に対して次のように記載されている。

改良材による土質安定処理については,処理土が固結した場合,補強材の引抜き抵抗機構に影響し,補強土壁の特徴である柔構造としての挙動が期待できなくなるおそれがある。さらに,固結した処理土の透水性は低いため,補強領域からの排水が難しくなる。このため改良材の使用にあたっては,供用期間中の補強土壁の安定性に問題が生じないことを確認する必要があり,安易に適用してはならない。

社団法人 日本道路協会:
道路土工 擁壁工指針(平成24年度版),pp.247~248,2012.7.

また,主要な補強土壁工法であるテールアルメ工法・ジオテキスタイル工法・多数アンカー工法の改訂マニュアルにおいては,それぞれ次のように記載されている。

[B]材料(細粒分の含有量が25~35%の材料)で細粒分を多く含んだ盛土材料を改良材による土質安定処理土としてテールアルメの盛土材料に使用するケースとしては,現場における土取場の変更等により緊急的にやむを得ないケースがある。その際,過度に改良材が用いられた処理土をテールアルメの盛土材料に使用した場合,処理土が固結し,テールアルメの特徴である柔構造としての挙動が期待できなくなる。また,固結した処理土の透水性が低いため,補強領域からの排水が難しくなることなどから問題が生じる。このため改良土の使用に当たっては,これらのことに留意して,十分な対策を講じた上で適用する必要があり,決して安易に使用してはならない。

一般社団法人 土木研究センター:
補強土(テールアルメ)壁工法 設計・施工マニュアル 第4回改訂版,pp.38~39,2014.8.

改良材による土質安定処理は,処理土が固結した場合,補強材の引抜き抵抗機構に影響し,補強土壁の特徴である柔構造としての挙動が期待できなくなる。さらに,固結した処理土の透水性は低いため,不用意に用いた場合,補強土領域からの排水が難しくなる。このため,改良材による安定処理土の適用に当たっては,補強土のメカニズムや排水性に影響を与えることのないように適切な改良処理を行うとともに,補強土壁の構造形式や使用条件,使用場所に応じて,その影響の検討を行ったうえで適否を判定するものとし,安易に適用してはならない。

一般社団法人 土木研究センター:
ジオテキスタイルを用いた補強土の設計・施工マニュアル 第二回改訂版,pp.38~39,2014.8.

近年,建設発生土の有効利用の観点から,発生土を石灰等で改良して多数アンカー式補強土壁の盛土材料として使用する例も見られる。改良土については改良方法や改良材,材齢等によって,その土質性状,強度,品質のバラツキ,耐久性等が大きく異なる。このため,室内あるいは現場での配合試験や現場での施工方法・施工条件に即した土質試験等を実施し,室内試験と現地施工での強度の違いや施工時の締固め時期や条件等の影響を考慮したうえで,盛土材の強度定数を適切に定める必要がある。

発生土の排土処理を含め購入土の使用が困難で,やむを得ず細粒分の多い盛土材料の適用が求められる場合,外力が小さく壁高の低い構造物に限定し,石灰等により脱水,乾燥,粒度調整等の処理を行い,盛土材料として必要な性状にした「処理土」を適用することがある。その際,処理土が固結した場合,補強土壁の特徴である柔構造としての挙動が期待できなくなる。このため,低質土の処理に当たっては,土の粒子としての性質を損なわないように注意する。この場合,適用を予定する処理土については,せん断強度や締固め特性等の土質試験等を行い,盛土材料としての適正を判断するものとする。

処理土の品質は,その強度やばらつきが補強効果に直接影響を与えるため,所定の設計強度を満たしているかを判断することを目的とした現場における品質管理が重要である。特に,施工時における締固めの管理は,通常の土質材料のように,乾燥密度による方法は困難であるので,事前に試験施工を行い,盛土の密度や強度が施工管理値を満足できることを確認し,その結果を遵守できるよう施工を実施する必要がある。

細粒土及びその処理土は,透水性が低いため,盛土内に浸入した水によって盛土材料の強度定数が著しく低下し,盛土の安定性に問題が生じる場合がある。したがって,細粒土や処理土を使用する場合には,雨水や表面水を盛土内に浸入させない排水工の設置と,仮に盛土内に浸入した場合にも速やかに排除できるよう,十分な排水工を施すことが重要である。

一般社団法人 土木研究センター:
多数アンカー式補強土壁工法 設計・施工マニュアル 第4版,p79~92,2014.8

以上のように,上記の補強土壁工法の改訂マニュアルにおいても,盛土材の改良は,安易に適用してはならない旨の記述をしている。さらに,NEXCO設計要領第二集においては,盛土材の改良に対して次のように記載されている。

セメント系安定材などの安定材による土質安定処理については,処理土が固結した場合,補強材の引抜き抵抗機構に影響し,補強土壁の特徴である柔構造としての挙動が期待できなくなるおそれがあるとともに,固結した処理土の透水性は低いため,補強土壁裏込め領域からの排水が難しくなる。このため,裏込め材には。安定材により安定処理した土は,原則として,適用しないものとする。

東日本高速道路㈱他:設計要領第二集【擁壁編 平成26年7月】,pp.68~69,2014.7.

以上より,NEXCO案件については盛土材の改良は適用しないものとなっている。

 

 

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