(更新日:2020年11月30日)
(1) 盛土補強工法とは
盛土補強工法とは,基礎地盤の表面あるいは盛土下層部に補強材を設置し,図-1に示すように補強材が盛土と一体化することによって,地の側方移動に伴う盛土底面の広がりを拘束し,さらには盛土の安定確保することを目的とした工法である。
(2) 適用
盛土補強工法の適用は,軟弱層厚が小さい場合,あるいは盛土全体の沈下がある程度許容される場合には,単独でされることが多い。また,軟弱層が厚い場合や盛土が高い場合等では,深層混合処理工法等の補助工法としても採用されることがある。
(3) 種類
盛土補強工法は,補強材の種類によって下記に分類される。
① ジオテキスタイル工法 … 引張り強さの高いシート状の材料が使用される。
② 金網工法 … 鋼製ネット,帯鋼等の材料が使用される。
これらの補強材は,様々な強度・変形特性の材料が開発されており,補強材と土との摩擦特性や最大引張り強さ等を十分に吟味して採用する必要がある。
この工法は,工費が安いため,他の対策工法の補助的な目的で用いられることが多く,圧密沈下による盛土材のゆるみを抑制するとともに,盛土材や基礎地盤が地震時に液状化した場合にも,盛土の変形抑制対策として効果が期待できる。
図-1 盛土補強工法の概念
(4) 設計
ジオテキスタイル工法の設計では,図-2に示すように考慮すべき破壊モードを以下のように分類し,これらに対して検討する。
① 基礎地盤の支持力不足による過大な沈下・変形
② ジオテキスタイルと交差し,基礎地盤を通るすべり破壊
③ ジオテキスタイル上の盛土の滑動
図-2 ジオテキスタイルで補強した軟弱地盤上の盛土の破壊モード
(5) 設計・施工上の留意点
盛土補強工法の適用に当たっては,特に以下の項目に留意する必要がある。
① 補強材は,高い引張強度を有することが必要であり,かつ地盤の変形に追従し得るものが望ましい。
② 地盤が超軟弱で大変形が想定される場合には,補強効果が期待できないため,地盤改良との併用が必要である。
ジオテキスタイルを用いた盛土補強では,大変形が発生するおおよその目安は,無補強時の円弧すべりによる安全率が1.0を下回る場合としている。
③ 補強材1枚当りの設計引張り強さには限界があるため,必要とする引張り強さが大きい場合や盛土の滑動荷重に対して大きな抵抗が必要な場合には,補強材を複数枚敷設する。
④ 補強材は,土中の化学成分等の環境条件によって劣化することがある。また盛土材に礫質土を用いる場合には,補強材が損傷することがある。このため,これらの環境条件の影響を十分に考慮して設計・施工する必要がある。
⑤ 盛立ての順序は,補強材にゆるみがないように緊張し,盛土のり面側を先行させる。
⑥ 盛土との一体化を図り盛土自重による定着効果を高めるために,補強材周辺の盛土材を締め固める必要がある。
⑦ 施工機械は,できるだけ接地圧の小さいものを用い,十分に締固める。
(6) 品質および施工管理
補強材や盛土材について,所要の品質の材料を選定し,補強材の敷設(敷設間隔,敷設位置等)を適切に行うとともに,盛土との一体化を図るために適切な締固め管理を行わなければならない。
(7) 効果の確認
盛土の安定性増大に対する効果は,盛土施工後の沈下や変形等の動態観測によって確認することが多い。所要の効果が得られないと判断された場合は,圧密の促進を期待し放置するなどの対策を検討する。
参考文献
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補強土壁工法とは,壁面材,補強材,及び盛土材を主要部材とした擁壁の1つです。
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