(更新日:2019年11月12日)
地すべりとは,斜面の一部あるいは全部が地下水の影響と重力によってゆっくりと斜面下方に移動する現象をいう。 一般的に移動土塊量が大きいため,甚大な被害を及ぼすことが多く,一旦動き出すとこれを完全に停止させることは非常に困難である。以下に,地すべり対策の概要を述べる。
(1) 地すべり対策の基本
表-1 地すべりの安定度判定一覧表
区分 安定度 |
地すべりの変状・地形特性 | 地すべり 変動ランク |
道路土工に対する留意点 |
A | 斜面に地すべりによる亀裂・陥没・隆起・小崩壊等が発生しているもの,路面や擁壁・水路等に地すべり性の亀裂や隆起等が発生しているもの,あるいは過去に地すべり等の災害が発生した記録や確かな伝承があり,地すべり対策工が施工されていないもの等,今後人為的な改変がなくても道路等に直接の被害を及ぼす可能性の大きいもの。 | 変動a 変動b |
原則として路線を避けるが,やむを得ない場合は計画安全率を確保できるような対策工を検討する。 |
B | 明瞭な地すべり活動は認められないが,滑落崖が分布する等,明らかな地すべり地形(崩積土・風化岩地すべり)を示し,地形的にも地すべり発生の素因を有するもので,人為的な環境変化を直接の誘因としてすべり出す可能性の大きいもの,または地すべり災害発生後,地すべり対策を実施したもの。 | 変動c | 地すべり頭部の盛土や末端部の切土をなるべく避けるために路線の線形の修正および対策工の実施を検討する。やむを得ない場合はその安全率を一時的に5%まで低下させることができる。 |
C | 地すべり地形を示すが,滑落崖等の徴地形が不明瞭なもの。 | 変動cを生じる可能性 | Bに準ずる。 |
(2) 地すべり対策の種類
表-2 地すべり対策工の分類
分類 | 工法 | 細目 |
抑制工 | 地表水排除工 | 水路工,浸透防止工 |
地表水排除工 浅層地下水排除工 |
暗渠工,明暗渠工,横ボーリング工 | |
〃 〃 深層地下水排除工 |
集水井,排水トンネル工,横ボーリング工 | |
地下水遮断工 | 薬液注入工,地下水遮水壁工 | |
排土工 | ||
押え盛土工 | ||
河川構造物 | 堰堤工,床固工,水制工,護岸工 | |
抑止工 | 杭工 杭工 |
鋼管杭工等 |
〃 シャフト工 |
深堀工等 | |
グラウンドアンカー工 |
(3) 地すべりの主な対策工設計と調査
地すべり対策の設計に当たっては,その効果が適切に発揮されるよう,予め必要な調査を実施する必要がある。
a) 頭部排土および押さえ盛土工
排土あるいは盛土予定箇所が空中写真判読等による別の地すべりブロックや地すべり・崩壊の危険性のある箇所とどのような位置関係にあるかを確認する。また,ボーリングを実施し排土や盛土工が新たな地すべりや崩壊を誘発しないかを検討する。
b) 地下水排除工
排除すべき地域での綿密な地下水調査,特に地下水検層を行う。また集水井や排水トンネルの場合は,その掘削部での地盤状況をボーリングにより検討することが望ましい。
c) 杭工
杭工は原則として,すべり面勾配の緩やかな末端で行うが,施工位置付近のすべり面勾配と杭基礎の地耐力測定が必要で,粘質土やこれに近い土質の地すべり地では,杭周辺土塊の性状を調査しなければならない。また,曲げ杭を設計する場合には,孔内水平載荷試験等を実施して横方向の地盤反力排除すべき地域での綿密な地下水調査,特に地下水検層を行う。
参考文献
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